子どもの本


           
         
         
         
         
         
         
    
 「国際理解」というテーマは、いま教育の中でもますます重要視されてきているが、今回はそうしたテーマと重なる二冊のノンフィクションを紹介したい。一方は歴史的事実、一方は現在進行的な問題を背景としているが、いずれも外国にあって社会事業活動を献身的に行った、または行っている日本人の姿を描いている。つまりは子ども読者からすれば「偉い人の話」ではあるが、決して偶像的に描かれてはおらず、献身的活動を生み出した社会的背景や、本人のモチーフといったあたりも的確に描き出されており、読者は自分と地続きの世界の中の出来事として受け止めることができるだろう。
 ただ、子どもの本において外国での日本人の活躍を描く素材としては、医療、教育、福祉といったボランティア的な活動に限定されているきらいがあり、例えばこれがビジネスの分野に及んだ時、「国際理解」もさらに深まるように思うのだが。

 『ブラジルの大地に生きて』藤崎康夫・作、山中冬児・絵(くもん出版、一三○○円)
 一九一二年、家族と別れてブラジルの移民船に乗り込んだ池上トミは十一歳だった。破産による父の借金を返し、家族が共に住めるようになることが彼女の願いだった。先に渡航していた叔母のもとに身を寄せたトミは、地元の医師の家で働くことになる。熱心なカトリック信者でもあった医師の一家は、十分な手当を払うばかりでなく、トミに家庭教師をつけて読み書きの習得をさせてくれる。やがて日本が連合国との戦争を始め、移民たちも大きな困難を迎えた時、医師の一家での、また教会の活動におけるトミの実績や人脈が、必然的に彼女を日本人救護活動の中心に押し上げていく。そして戦後も、一世たちのための老人施設を造るなど、「日系移民の母」とまでいわれる存在となるのである。
 ポルトガル語の読み書きは達者だったが、日本では小学校にも行けなかったため、結婚して日本にいる夫の父母に手紙を送る際、ひらがなでしか書くことができず、ブラジル人と間違えられたという話が、トミの生涯を象徴するエピソードとして心に残った。

 『ベトナムの「子どもの家」』岡本文良・作(金の星社、一二○○円)
 東京で小学校の教員をしていた小山道夫が、ベトナム中部の都市フエに渡って、ストリートチルドレンのための施設「子どもの家」を造るようになったのはなぜなのか。一言でいえば、その設問に答えてくれるのがこの本である。
 若いころの苦学、学生時代のベトナム戦争への思い、子どもも教師もがんじがらめの日本の学校教育への疑問、ニュージーランドの婦人との出会いと息子の留学など、糸はさまざまに張りめぐらされているが、教会や赤十字、海外協力隊といったバックを一糸持たず、人間としての”普通”の思いに引きずられながら、その思いを本当に形にしていくプロセスは、じっくりと感動的であり、また彼の活動を支援する人たちとのさまざまな出会いも、わたしたちを元気づけてくれる。過剰なドラマ化を排し、等身大の人間の正の可能性を実感させてくれる好著である。

 (ふじた・のぼる=児童文学評論家)(東京新聞1998.02.28)
テキストファイル化山地寿恵