紙芝居という”新しい”文化を、世界に広げよう!

野坂悦子

           
         
         
         
         
         
         
    
 この春(2008年)に『紙芝居の演じ方Q&A』の英語版として、"How to Perform Kamishibai Q&A"(まついのりこ作・絵、野坂悦子・山口カーラ訳、童心社)(amazon)を上梓いたしました。紙芝居文化の会が始まって7年目の今年、世界にむかって「紙芝居をどう演じるか」というテーマを、単なるハウ・ツーものとしてではなく、ある意味での文化論として英語にすることができました。

 著者のまついのりこさんは、英語版の前書きに、こう書き下ろしています。
「紙芝居の独特の形式には、作品内容を"共感"で人々に伝え、"共に生きる喜び"を生みだす素晴らしい力があります。しかも、紙芝居は必ず演じる人が必要であり、演じる人によって"共感"が高められ深められていきます。この本は、日本の最大の紙芝居団体<紙芝居文化の会>の研究が基礎になっています。どうぞ、紙芝居を楽しんで演じてください。紙芝居を世界中で演じ、子どもたちの笑顔でいっぱいにしましょう。」

 スペイン、オランダ、アメリカからは、すでに、「こういう本を待っていました!」という声が届いています。絵本とは違う特性を活かし、みんなでひとつのことを感じあう喜びを通して、「物語」をどう伝えていくか、ということを、世界の人びとは大切なものとして理解しはじめているのです。私自身も、kamishibaiを、単なる形式としてではなく、共感=kyokanという言葉とともに世界に伝えていきたいと思っています。

 日本には、欧米で育まれた絵本の文化を、独特の風土とメンタリティのなかで見つめなおし、作家と出版社が力をあわせ、絵と文を創り上げてきた歴史があります。今こそ、日本で育んできた紙芝居文化を、日本から世界にどう伝え、そのなかでどう育むかを考えてもよい時期ではないでしょうか。
 皆様の智恵とお力を、世界のあちこちで根づきはじめた紙芝居文化のために、ぜひお寄せください。この本に対するご感想、ご意見などあればお寄せいただければ、とてもうれしく存じます。また、"How to Perform Kamishibai Q&A"を海外のこの人に送ってほしい、紙芝居文化を海外のこの人にぜひ知らせたい、というお考えがあれば、いつでも私までお知らせください。

 紙芝居文化の会のメンバーとして、また紙芝居の演じ手、創り手として、これからも模索をつづけていくつもりです。この秋には、私が初めて書き下ろした脚本に、オランダの絵本作家ヒッテ・スペーさんが絵を描いて下さった紙芝居作品『アネッタ、すべった!』も出版されます。困難な時代のなかで生きぬく力となるような物語を、共感を通じて子どもたちに届けていくkamishibaiが、国内でも国外でも、もっともっと多くの人びとに愛されるものになれば、と心より願いつつ。