国際児童文学館 寄贈者・関係者等と知事との意見交換会 発言要約

と き:平成21121日(水)午後520分〜630

ところ:府庁本館3階 特別会議室()

出席者:橋下知事、綛山教育長、鉄野地域教育振興課長、中道課長補佐(司会)

上の和明 府議会議員(意見交換会仲介者)

小峰紀雄(社団法人日本書籍出版協会理事長:通年図書寄贈者)

鳥越 信(児童文学者:設立時図書寄贈者)

伊藤元雄(故・南部新一代理人:大規模寄贈者)

古橋理絵(塩崎おとぎ紙芝居博物館代表者:大規模寄贈者)

畠山兆子(大阪国際児童文学館を育てる会常任委員長)

田丸信堯(大阪国際児童文学館を育てる会常任副委員長)

松居 直(財団法人大阪国際児童文学館理事長)


           
         
         
         
         
         
         
    

(知事)

まず、私の基本的な考え方を述べさせていただきまして、皆様方から忌憚のない意見をいただきたいと思っております。今日は皆様方からご意見を伺うということですので、何も決定するつもりはありません。

今の児童文学館、機能・人・組織、これが大問題であります。この組織に任せていては、貴重な文学館の図書が死財産になってしまう。府民感覚で言いますと、駐車場が1,200円、誰も1,200円出して停めない、それが私の感覚です。

そ れからテーマ展示、区役所の展示と同レベルです。僕の思いとしては、民の発想でやっていきたい。児童文学館がモノレールなどいろんなイベントをやっていま すが、時既に遅し、いろんなアイデアはもっと出すべきだった。こういう事業系のものは民に任せるべし。もし資料を保管するということであれば公がやればい いでしょうが、子どもたちに広く資料を見てもらうということであれば、やはり民にしかアイデアが出てこない。

今、中央図書館が市場化テストをやってまして、来年1年 間、公がやったらいいのか、民がやったらいいのか、きちっと見させていただくということを言っているんですが、その思いは中央図書館が完全に民営化される 中で、より発想豊かに運営してもらう中で、貴重な資料を最大限有効活用してもらうことが最善の方法だと考えております。児童文学館の人・モノ・組織に置い ておくのは全くもったいないという思いがあります。児童文学館に対する、組織に対する不信感が根本にあって、私のいろいろな考えを発している。


(書協・小峰)

設立当初の頃、保存機能をもったすばらしい文学館を作りたい、なので出版社にもぜひ寄贈で協力していただきたい、との話があり、普通、出版社は図書館には寄贈しません。特別な思いで寄贈させていただきました。28年続けてきた官民協働の関係を深めて、何とか存続の可能性は探れないものだろうか、設立趣旨にそった存続が可能であれば、今後とも寄贈をさせていただきたいと考えている。

(知事)

私 は組織のことを言ってるだけです。組織が変われば、資料をこのまま保管して終わるのではありません。また、機能を全く否定しているわけではありません。出 版協会の皆さんに勘違いされたくないのは、資料の価値は本当にありがたくて、組織が抜本的に変わることによってできるのであれば、それが中央図書館が民営 化することなのか、中央図書館の組織なのか、僕は組織の改革というものに一番重点を置いています。

(小峰)

危惧するのは、長い時代にわたる私たちの寄贈本も含めて、貴重な子どもの文化、本の資料が体系的に揃っています。ぜひとも分散、散逸がないように、明日の子どもたちに手渡していただきたい。

(知事)

組織を抜本的に変えて、皆さんの意見を伺いながらもっともっと子どもたちに見てもらいたい。散逸させるなんて思っていません。どうやって有効活用しようかと考えています。

(教育長)

今、児童文学館には70万冊、中央図書館には170万冊あります。児童文学館の本は別に管理して、貴重本は貴重本としてきちんと保管し、資料館としての機能を失わないように対応していきたい。ただ、より多くの人たちに利用してもらうために、中央図書館は65万人という利用がありますのでやっていきたいと思っています。

(知事)

移転後には、閲覧室が248uから311u、特に子ども室は248uから627uまで広くなります。また、子ども室の蔵書は24千冊から12万冊、特に15歳以下の登録貸出者数957人が19,313人になります。できた時の理念はすごく立派であっても黙ってても給料が入る組織だと工夫しないんです。これを大きく有効活用、より多くの子どもたちに見てもらう、それをやっていきたいと思っています。


(鳥越)

もう25年前です。知事、教育長、財団の理事長や館長も替わっています。原点をご存知の方がもういらっしゃらなくなりました。

私 が全国に公募という形でお願いして、大阪に決まったわけです。大阪としてはどこに作るかということで、候補地が3か所あった。泉北ニュータウン、大阪市内 の外大跡地、そして現在のところです。万博公園は、当時はモノレールもありませんでしたし、もっと陸の孤島でした。もし来館者を考えるんでしたら、誰が考 えても外大跡地が一番いいことは分かっている。それなのに、なぜ一番辺鄙なところへもってきたかということです。

25年前というのは、これからはコンピュータの時代だということが明らかになりつつあった時代なわけです。これからは、いろんな情報がコンピュータから、映像も伴った形で送り出せるということが目の先に来ている時代であったのです。

そこで、児童文学館に求めたことは、情報の発信基地だったわけです。つまり、手に取って見たいという方は、来ていただくしかないけれども、そうではなく情報が欲しいという方に対しては、南極でも砂漠でもよかったんです。

とにかく、情報を発信する。そのためには2つのことが必要でした。1つは、過去に遡って本を集めていく、さらに将来に渡っても集めていくわけですから、資料を保管する空間が必要だった。空間となると、万博公園が一番です。もう1つは、情報を求める世界中の人たちに対して、正確で、精密で、豊富な情報が提供できるかどうかということは、専門スタッフがどれだけそれに取り組めるかにかかってくるわけです。ということで、これまでやってきたわけです。

ところが財政的な問題で、中央図書館に移るという話になったわけですが、まず、空間的に中央図書館では処理しきれないと思います。それから専門スタッフが、正確で、精密で、豊富な情報を提供できるかというと、ちょっと見えてこない。そこが私は一番心配で、その2つのことが生かされない限りは、移転することは困る。

(教育長)

経過の中で受けとめているのは2点。当初、鳥越先生が全国公募されたときには、整理して公開することと、集め続けることを条件にされ、それをもとに70万点に育った。児童文学館が空間として抱えてきた問題に書庫の問題がずっとありました。

書庫問題は、中央図書館に移転すれば、170万冊の府立図書館の部分と、70万冊の児童文学館の部分に分けて、また、コンピュータ管理システムも両方の部分は分けて、今のまま継承して管理していく予定ですので、資料館的な機能については十分継承していきたい。

専 門スタッフのノウハウの問題は、司書がたくさんおりますので適切に引き継ぎを受けて、より幅広い子どもたちに見てもらえる。また中央図書館は市町村図書館 とのネットワークを持ち、車両も運行しているので、貴重書は困るが一般的な児童書であれば、市町村図書館を通じて、より幅広い子どもたちに利用してもらい たい、そういう思いでおります。

(知事)

これは財政の論議じゃないんです。設立時の最初の理念が20年継続するなんてありえません。途中で失敗とか、頓挫とかしています。なぜかというと、常に改革をし続け、努力をし続けないと、この行政の組織というのは発展していかないわけです。25年前の理念を否定するつもりは全くないですが、常に改革が必要、見直しをしていかねばならないと思うんです。

僕も情報発信機能が重要と思いますし、それが全てです。関係者の話し合いが前提になっているけれども、背後にある利害関係抜きの一般府民のことを考えろと言っているので、880万 人府民の認知度を言えばほとんどの人が知らない。これが問題であり、研究者だけでは府民にわからせることはできません。発信機能は、発信にたけた人がやら なければならない。発信の方法を考えているんです。それをやるためには、空間は中央図書館でも十分にあります。発信の方法も、25年経った今では、あそこでは全く発信機能が達せられません。僕は、先生方から頂いた資料を最大限に活用して、民の知恵も入れながら府民、子どもたちに発信します。

(鳥越)

 私が言ってるのは、発信する中身です。利用者にとって必要な、正確で、精密で、豊富な情報がどこまで提供できるか、その中身。今後とも、どうしたら一番いいのか、お互いに知恵を出し合う、そういう機会を作ってくださいということを、是非お願いしたい。

(知事)

そこは教育委員会もやらせていただきます。

(教育長)

我々もお知恵を頂いて、我々の考え方と上手くマッチング出来て良いものを作っていきたい。そうすればあまり違いはないと思います。


(南部・伊藤)

南部コレクションは、日本でも世界中でもない貴重なものです。南部新一というのが生きていた頃に、児童文学館ができる前に寄贈したんです。南部新一は、明治・大正・昭和とずっと資料を集めてきて、児童文学館の理事長であった司馬さんとかいろんな人から話があり、15千点くらいの資料を、自分も研究で行くことを楽しみにして府に寄付しました。

児 童文学館を活かして、生前の南部新一が楽しみにしていたものが活用されるのであればいいという形でやったわけですから、遺族の方たちに連絡したら、基本的 に現地存続です。なにしろ、いい活用をしてくれ、できないんであれば府の責任において返却してくれと。違うことは止めて欲しいんです。

 具体的に活用方法と、いい方向にもっていけるかということを今後とも続けてほしい。そして、寄贈者に情報を流していただきたい。そこで判断しますんで。

(知事)

活 用の方法を見ていただいて、まずいと思われれば返却はさせていただきますんで、やっぱり活用方法が一番重要だと思います。研究だったら、今の行政では公金 投入できませんので、やるなら大学。府民に見てもらう、利用してもらうことが大切。活用方法で府のやり方を納得していただけるかどうかを見ていただきた い。


(紙芝居・古橋)

 街頭紙芝居ですが、児童文学館には約4千巻、思いを込めて寄贈させていただいたものです。塩崎氏の寄贈した紙芝居というのは、有名な少年絵画を描いた方とか、手塚治虫さんと「新宝島」という漫画を描いたと言われている有名な画家が描いた絵など、11枚原画で印刷物ではないのです。

師 がなぜ国際児童文学館を選んでこの貴重な絵の紙芝居を寄贈したか。研究機関であるというのが一つ。児童文化とか児童文学とかをよく研究しているおり、横抜 きものの紙芝居という日本独特の手法で子どもに対する貴重な文化をよく知っている専門職員たちが、日本文化を国際的に発信してくれる情報機関であるという こと。それから、広い万博があるところでやっていくというのが、師匠のもう一つの目玉でもあったんですけども、そういうところへ寄贈したので、図書館へ寄 贈したという意識はなかったわけです。ですから、このまま児童文化や児童文学に通じている特色ある児童文学館で、塩崎さんの思いのある紙芝居を保存いただ いて、かつ活用していただきたいという希望です。

年に2回 ぐらい児童文学館で展示と、我々三邑会のメンバーの紙芝居屋さんを呼んでくれて、子どもたちに上演させていただいているんですけど、そういう機会も与えて いただける児童文学館という貴重な場所であります。図書館に移ってしまうとそうした活動が閉ざされる、貴重な資料を冷凍保存されてしまうのではないかとい う心配です。

 西成で塩崎おとぎ紙芝居博物館を持っているんですけれど、そこと国際児童文学館が連携をとれておりまして、海外から絵元として持っている資料を見たいという時には、海外の人を紹介してくれる、そうしたことができるのかという心配もあります。

(知事)

勘違いされているのかもしれませんが、全部廃止ということではなく、文学館の組織を廃止と言っているだけであって、今のままだと皆さんの思いというのは、府民に対して何ら実現できていないです。

まさに改革です。研究機能というのは府ではできません。何でもかんでも25年 前に決めたこともそのままというのは、今は無理ですから。自治体が研究を行うなんて府民が納得しないですよ。そういう財源があるのであれば、それを府民 サービスとして、いかに子どもたちに見せるか、喜んでもらうか。もし研究員が研究したいというのであれば、大学でやってください。府はあくまでも府民に対 するサービス機関です。

現 地視察行って、「あっこれは僕の価値観と合わないな。」と思ったのは、児童文学館の方に「黄金バット」の紙芝居を見せていただきましたが、白い手袋をして 持ってきたんですよ。今の児童文学館の考え方は、貴重な財産的価値のあるコレクション、見てもらう触れてもらうというよりもきれいに保存する。これは、自 治体のあり方としては、昔は成り立っていたのかも知れませんが、今は違います。今の考え方は府民サービスができるか、子どもに気軽に紙芝居を楽しませてあ げたい。保存するだけであれば、大学とかで扱ってもらわないと今の時代では難しいと思います。

また、海外との交流とかもやりますから、できる限り発信していかなければならないし、より多く見せなければならない。皆さんから頂いた資料を、25年経った現在、これをどう見るのかということ、子どもたちに積極的に見せるということであれば自治体がやるべきことだと思います。この分岐点に今さしかかっているところです。

(古橋)

 街頭紙芝居というのは、11点 が原画です。これを子どもたちに広く見せなければならない、この大衆文化を伝えたいという思いはあるんですけれど、子どもに見せるということは、そのもの を使ってみせるということで古びていきますので、紙ですから、一方ではそのことも考えながら、後世に残すことも考えながら活用していくという、この2つのことをうまく判断をしてくれる専門員の人がいれば、一緒についていくという形になります。

(知事)

  絵画というのは凄い宝物ですよ。あるところでも何十億も出して買っているのに、倉庫に入れっぱなし。また古いおもちゃ、これも何億も出してビッグバンにし まってある。こうした貴重な現代美術やおもちゃなりを合わせて、府庁がWTCへ移転してここ(現府庁舎)が使えるのであれば、今持っているコレクションを 展示していく。

そうしたものがあれば、図書館にこだわらなくていいし、古橋さんの言われるようなことを僕はやりたい。あそこの組織では、無理だと僕は判断しました。


(育てる会・畠山)

 中央図書館の利用者数が年間65万人と言われてますが、万博公園の年間利用者数は150万人いるんです。先ほど駐車場の話、1,200円は私も高いと思います。でも、大多数の利用者はバスとかモノレールを使って来ているんです。万博公園が府に移管されるような話も聞いているんですけど、その時には、文学館の利用者は無料にしていただきたいと思います。

 2番 目に広報機能のことですが、それは教育委員会が児童文学館をより有効に活用するという努力をしてこなかったと思っております。いつも府域の小学校の子ども たちに、児童文学館に見学に来てもらっています。自然豊かな環境の中でお弁当食べられますでしょ。中央図書館にはそういった場所がないんです。子どもたち というのは、楽しい思いの中で触れ合わなきゃだめなんですよ。

2001年の行政改革の時に、すでに提案してるんです。府が施設の有効利用をしていないのは教育委員会の怠慢ということがあると思いますし、知事もぜひ指導していただきたいと思います。

 小学生たちが来れば、あそこ楽しかったよ、お父ちゃん連れてって、お母ちゃん連れてってということになりますし、そしたらものすごい数の子どもたちが来るんですよ。まさに、多くの子どもたちに見せることになる。それをさぼっていたのが府の教育委員会じゃないですか。

(知事)

 それは全くそう思います。他に利用者の少ない施設はたくさんある。弥生博物館も、人権博物館も最悪の展示だったんで、今回変えてもらうんですけどね。

(畠山)

 中身の問題なんですが、私が勤めている梅花女子大は、日本で一つしかない児童文学科を持っていますから、もちろん協力させていただきますし、展示内容に関してもいろんな形で協力したいと思います。

府教育委員会がアピールしてこなかったということで、まさに有効利用はできる。たくさんの子どもたちにアピールできたんです。それをしなかった。その結果を文学館だけに、人数少ないとか、そういうことだけで非難するのはおかしいと思うんです。

(知事)

 だから、図書館に行って頑張ります。民営化した時にできると思っています。

(畠山)

 専門家の意見も聞いて、教育委員会がもっと協力するという提案を出されてそれが実現できるのかどうか、きちんと考えてほしいと思います。

 3つ目、育てる会も一生懸命になって請願のことをやりました。知事は結果を大事にされる方なので、私たちもこれだけ頑張りましたので、是非、結果としての評価が見える回答を出していただきたい。

 4つ 目、できるだけ多くの子どもたちに貴重な資料を見せたいということはわかるんですが、例えば「黄金バット」、復刻本もあるんですよ。なぜ貴重なその本自体 を見せなければならないんですか。復刻本でいいじゃないですか。貴重本は、貴重書庫で大事に博物館的に扱っても私は構わないと思うんです。府の財産とし て。

(知事)

 わかりますが税金がかかるんです。

(畠山)

  わかっています。前にマンガのこともおっしゃってたですけど、「少年ジャンプ」の創刊号を子どもに貸して見せなくてもいいんです。だって、ジャンプで人気 があるのはちゃんとコミック本が出ているんです。そうしたら日本で少ししかないジャンプは残しておいても構わないじゃないですか。そして、見たいマンガは 家へ帰ってお菓子を食べながら見ればいいじゃないですか。そんなことを貴重な本でやることはないのです。

(知事)

 そうしたことは考えが同じ方々がお金を出し合っておやりになればいいわけで、公金を使うのとは違うと思います。

(畠山)

 財政が非常に厳しい中で5億8千万円の移転費用を使うということですが、今まで7億6千万だったのが値引きされたのがなぜなのかわからないですけど、私自身は、10億もかかるだろうと思っていたのになぜ下がったのかなと思っているんですが、移転しても今より良い機能を持たせたり組織を作ろうとしたら、運営費はもっといると思うんです。

(知事)

今の中でやりますから。これは組織のマネジメントの問題なので、今の組織で十分できると考えています。

(畠山)

それでは今より良くなるとは思えない。たとえば、書籍出版協会の方は2千万円ほどの新規寄贈をストップするというようなことをおっしゃってますけど、その分を買ってくださるということですか。

(知事)

いいえ。それは府の財政を見て適正にします。

(畠山)

そうすると2千 万円分損するわけじゃないですか。国際児童文学館の財産というのは、継続してきているんです。つまり長い期間をかけて子どもの本が変化していて、来年もっ といい本を出すためには、こういう本を出していたんだということを含めて、結果的には大阪府下だけではなくて日本全国なんです。いくら何でも、知事は大阪 府民の子どもだけが可愛くてそれ以外の地域の子どもたちはどうでもいいなんて思われませんでしょ。日本中の役に立つのは嫌ではないですよね。

子 どものパンを取り上げるような感じで、財政を立て直すんじゃなくて、子どもって大阪の将来を担う人たちじゃないですか。町工場がロケット飛ばそうなんてい う、ああいう豊かさみたいなものも、ぎりぎりのところまで大人が我慢して守れないものか、それが私が思っていることです。

そういう意味で、財団法人の運営費を削るとか、それから地元市がお金を出すとかいろいろ言ってますよね。そういうことをもう一度検討してほしいし、大学も含めて、可能な限り話をいい方向へ持っていっていただけたらと思います。

(知事)

他にも医療や福祉いろんなことがあり、児童文学館が府の全てではありませんから。思いのところはよくわかりました。僕の立場から言うと、子どもたちを伸ばしていくのは、児童文学館だけが全てだという判断はできないということもご理解いただきたい。


(育てる会・田丸)

 70万冊を子どもたちへと言っておられますが、あそこにある資料というものは、ここにある「蔵書解題」という本にもありますけど、カタカナで書いた物語、漢文調のもの、明治の人が書いた本を一生懸命集めているんですよ。70万のうち50万 は思いを込めて、小峰さんとかが贈っているものです。それを子どもに見せたいとおっしゃるけども、子どもに見せるためにお贈りになられた本じゃないんで す。これは、当時知事が、きちんと整理して公開するよと約束なさったという心意気、そういう心意気に賛同して贈っていただいたものです。

何で中央図書館じゃあかんねんという議論がありますが、担保がないんです。あの場所は担保なんです。ここで集めるよって大阪府が意思表示をしているんです。そして30年経って、つぶすよ、中央図書館へ動かすよと言うでしょ、そこで寄贈者と出版社との信頼関係が切れているんですよ。

中央図書館が頑張るよと、知事や教育長がおっしゃっても、それを保証する担保が何もないんです。来年になって、中央図書館の書庫も一杯になったから、ちょっと方針変えるからということになって、あっそうですかと引き下がるわけにはいかんというのが我々の考えです。

これは府民の財産なんです。30年かけて、我々も府民ですから、税金をそこに使ってもらって、私は大きな評価をしておる。子どものためとはどういうことか、考えてほしい。大人が子どもの文化に対する見識を持ってほしい。

明 治以来、先人たちがどんな苦労をして工夫をしながら、出版し、遊びも考え、映画をつくり、鞍馬天狗からずうっと、今、ゲキレンジャーなんてやってるで しょ、それらを大人が一つひとつ確認しながら、次の文化をいろいろ考えていく。そこに子どもを喜ばせる、話題があるんです。子どもだけが笑うということ は、私には考えられない。大人あっての児童文学。子どもの文化を楽しんで、そして子どもに伝えていく、そのための施設なんです。

そのために研究はいるんです。大学とおっしゃるけど、府立大学に作っていただけますか、と言いたいです。この財産について、どうするか。途絶えさせないと言われるけども、担保がないですよ。たとえば、10年先、20年先どうなんねんと。10年先は80万冊、30年先は100万冊になっています。世界文化遺産に登録できるような事業、そういう文学館なんです。あそこにあるから、世界からも見える、出版社にも見える、今はみんなに見えているんです。

そしてその整理には研究者がいるんです。財産を失うことは残念です。協議を引き続きお願いしたい。先ほどの回答ではそういうことやっていこうと言われてますから、嬉しい話です。で、教育委員会から予算要求出ているんですね。これは、2月議会には出ないと理解したらいいですか。

(知事)

 いや、出てくると思います。それは、まさに府民の皆さんを代表する議会の審議ですよ。僕が出しても議会でだめなら否決ですよね。

「担 保がない」と言われましたが、僕みたいな知事が出てきたらそれはないですよ。あそこの場所にあることは担保にならないです。現に、国際児童文学館があそこ にあるのを、変えようと僕が判断しているわけですから。場所とかではなく、選挙でどういうトップが選ばれるか、そういうのが担保になるわけですよ。

20年前、30年前の考えがずっとそのままではなくて、時代時代の状況に応じて変わってきたと理解していただくしかないです。僕の今の価値観、府政運営のあり方は寄贈者の方々だけに目を向けて運営するということはできません。

寄 贈者の思いに反するのであれば、本をお返しするなりの対応になると思いますが、僕はどれだけ多くの府民の皆さんに納得してもらえるか、そうした視点に置い ていますし、職員の目の前の利害関係者だけじゃなくて、その奥の多くの府民の声を聞くことを府政運営の方針としておりますので、寄贈者の方々の思いと僕の 思いが違うということであれば、皆さんの思うとおり、寄贈をお返しさせていただかねばならないのかなと思いますが、今の府政状況ではいかに多くの府民に見 てもらうか、そっちに視点を置いているとご理解いただくしかない。僕の意見が住民の皆さんの意見が反映された形ででるかどうかという議論ですから、予算案 は出します。

(田丸)

 話し合いをすると言うのであれば、いわば期限付きみたいなもんですわ。そういった中での話し合いというのは、フェアではないじゃないですか。

(知事)

 この議論するのはやっぱり議会なんです。住民の思いもある。今日はこうして意見を伺わせていただきましたけれども、府議会で議論したいと思います。他に違う意見をいっぱい持っている人がいます。中央図書館に移転してくれという人もいるわけです。議会制民主主義なんです。

(田丸)

 こういう協議の場を引き続き設けていただくことは異論のないところですね。

(知事)

 僕は出ませんよ。

(教育長)

 教育委員会として説明すべきところはしていきますので。

(知事)

必要な時は出させてもらいますよ。


(財団・松居)

こういう話し合いの場を本当に大切にしていただきたいです。

 最後に、今日の我々の意見をまとめたものを知事にお渡ししたいと思います。

(知事)

はい。意思疎通は大事ですから。


                      (敬称略 文責:財団法人大阪国際児童文学館)

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