子どもに読んであげたい本


赤木かん子

           
         
         
         
         
         
         
     
 今月のテーマは“海”――。

 まずはクラシックな定番絵本のシリーズから「ねこのオーランドー海へいく」(童話館出版、1752円、(電)0958・28・0654)。これはママレード色(日本ならトラ猫ね)の立派な雄猫オーランドーが愛する妻と3匹の子どもたちを山のキャンプや海に連れていき、しっかり夫と父親をするシリーズで、猫の好きな人たちにはもちろん、そうでない人たちにも長年愛されています。キャスリーン・ヘイルの描く猫の表情がなんともいえず深味があるのよ。1冊目の「ねこのオーランドー」だけが福音館書店で、長いこと品切れ……。福音館さん、早くなんとかしてくれ。童話館さん、残りのシリーズ出してくれてありがとう!

 うってかわって「ぶたぬきくんうみへいく」(佼成出版社、1300円、(電)03・5385・2323)=写真=は斉藤洋と森田みちよのコンビによる最新の人気シリーズ。

 どんなに化けかたを練習しても顔だけはぶたのまま残ってしまう、どじでやんちゃなぶたぬきくんと、しょーがねーなー、とぼやきながらもぶたぬきくんがひどい目にあわないように気をつけてやるたぬきくんが海へ遊びにいく話です――。

 斉藤洋のストーリーはたいていそうですが、成長途上の主人公と、それを保護して成長させてやるサブキャラクターが登場するのです。子どもが無事育つにはね、守ってくれる人が必要なのよね。というわけで斉藤洋の本は実に現代的で、子どもたちは敏感にそれを感じとって“斉藤印”の本を愛するのです。

 3冊目は大人の本として出されていますが、字が一字もないので年齢フリーの写真集「海月(くらげ)」(ブロンズ新社、2000円、(電)03・3498・3272)。

 美しい! の一語に尽きます。本当に“海の月”とはよくいったもんだ。真っ黒い表紙のまんなかにボーッと浮かんだクラゲは実に幻想的です。

 クラゲは癒(いや)し系とかで最近人気があるようですが、何冊か見たなかでもこれが一番美しくムダのないしまった写真集になっていると思います。

 小・中・高の学校図書館は入れてね。