大阪府立国際児童文学館存続のために、パブリックコメントをお寄せください。

 大阪府財政立て直しの一環として、この施設が廃館されようとしています。
 必要の無いものや、天下り先のための施設などは、整理されるべきではありますが、何故、この施設が? と驚いています。
 一般の方々には、なじみのうすい施設であることは確かです。しかしそれは、児童文学館が、子どもの文化資料を整理保存し、今後の児童書の出版や研究に役立てるための専門館だからです。例えば、児童書やマンガの復刻や、全集を作るとき、編集者たちが東京からここにやってきて、専門員から情報を得ながら資料を集めることもしばしばです。何故なら、児童文学館は、この国で一番そうした資料がそろっており、また、専門員がいるので、的確な資料が素早く出てくるし、彼らのアドバイスを受けることもできるからなのです。
 表紙カバーや帯も、ここでは保存されます。そうしたものには、その時々の情報が沢山ある(例えば、帯には出版社がその時に売りたい他の書物の宣伝やキャッチコピーがあります)にもかかわらず、簡単に無くなってしまいますし(無くすでしょ? 私は自分の本の場合捨ててしまいます)、無くなると古書店を巡っても、もう手に入らないからです。
 子ども文化の資料を愚鈍に、しかし黙々と的確に整理保存していってくれているのが、児童文学館なのです。
 一般の方々が直接使うことは少ない施設(もちろん、使っていいのです。自分が昔読んだマンガ雑誌を、もう一度見たいとかね)ですが、そこにある資料を必要とする出版社や研究者の仕事を通して、実は私たちはその恩恵を受けています。
 また、子ども文化資料をちゃんと次の世代に残していくことは、私たちの責任でもあります。
 ですから、本当は、廃館ではなく、今は紙芝居、児童書、マンガが主立った保存対象であるのを、アニメやゲーム、おもちゃにまで広げて収集していってもいいくらいなのです。
 もちろん、年間二億円という予算は馬鹿になりません。が、寄贈など、民間からのサポート率が非常に高い施設であることも事実です(例えば、資料の実に6割は出版社などからの寄贈)。二億円の削減はできるでしょうが、四半世紀かけて築いてきた、そうした民間との信頼関係も失われてしまうのです。
 もったいない。

 こうした施設は、持続的に資料を収集していくからこそ使い物になります。数年収集を止めてしまうと、その間の資料を集めるのは非常に困難です。一度止めると、死んでしまうのです。ですから、知事が言うような、必要ならまた始めればいいといったことではないのです。

 ならば国がやればいいという意見も存在します。間違いではないと思います。しかし、地方自治体が、その外部にも役に立つ施設を持つことは、全くの無駄でもありません。それは、自治体が、自分たちの文化に対する考え方を示すための象徴となるからです。
 これまで、大阪府はこの施設をあまり自慢してこなかったかもしれません。
 来阪した、昭和天皇、平成天皇皇后両陛下(皇太子のとき)、秋篠宮ご夫妻、皇太子殿下などの見学コースに、大阪府は必ずここを入れていましたから、誇りたい気持ちはあるけれど、一般にまでそれをしてこなかったということかもしれません。が、府のイメージを世界に売り出すために、外に向かって大いに自慢して良い施設なのです。
 せっかく、そんな施設を、コツコツと作り上げてきたのに、廃館なんて、実にもったいない。
 司馬遼太郎や、桑原武夫(フランス文学・文化の研究者)、菅泰男(シェイクスピア文学研究者)など、別の世界で一流の仕事をしてきた人々が、児童文学には直接関わりがないにもかかわらず、理事長や館長に就任した(開館前の記念講演は手塚治虫が行いました)のは、児童文学館が文化資料館として重要なものであるからです。

 みなさんの多くは、児童文学館をご利用になったことはないかもしれません。でも、そうした資料館が大阪府にあること、それは府だけではなく、多くの人の財産としてあることを、どうぞご理解いただき、パブリックコメントを寄せてください!
 別に大阪府民である必要はありません。 
 府の文書にある、「府民等」の「等」とは、「有識者、利害関係人、その他意見及び情報を提出する意思を有する者・団体等のことをいいます」から、存続を願う人なら書く資格があります。

*追記
 例えば、「児童文学館と図書館は違うもの」と書くと、残念ながら、図書館は資料館より値打ちが低いと言っているように誤解される方がいます。また、対立するものであるかのように受け止められる方も。実際、存続運動に関して、大阪府以外の地域で司書をされている方のブログで、そうした発言を読んだこともあります。
 これは、まったく違います。
 図書館の児童室や、児童書コーナーは、まさに今の子どもたちと直接ふれあう、彼らが読みたい書物の情報を得ることができる専門の場所です。これは児童文学館では(一階に子供室はありますが)、とても出来ないサービスと重要な情報の宝庫です。もし子どもたちに、児童文学館と図書館のどちらが好きかを訊ねれば、ほとんどの 子どもは図書館と答えることでしょう。
 その意味では、児童文学館の専門員は、図書館の司書にはかないませんし、司書の持っている貴重な情報をもっともっと欲しいでしょう。
 ですから、両者が情報を交換し合い、互いを活かしていくことが大切なのです。そうした試みはこれまでも続けられてきましたし、まだまだやり方を考えていく必要があります。
 しかし、片方の児童文学館が失われてしまうと、それができなくなってしまうのです。
 やはり、もったいない。

           
         
         
         
         
         
         
    

「パブリックコメント手続きの実施状況」

パブリックコメントに
みなさまのお声をお寄せください。

このたびは、大阪府立国際児童文学館・財団法人大阪国際児童文学館の存続のためにみなさまからのご支援をいただき、本当にありがとうございました。
6月5日に発表されました大阪府の「財政再建プログラム案」では、財団は、抜本的見直し(21年度中)、施設は、21年度中に廃止し、中央図書館へ移転するという、まことに厳しい提示がされています*。
 当館がこれまで果たしてまいりました役割・機能について、全く評価されていないのではないかと感じ、まことに残念至極です。
しかしながら、これで、最終決着というわけではありません。今後、この案を 6月中旬ごろから始まるパブリックコメント(市民からの意見募集)にかけ、7月に府議会で審議される予定となっております。それゆえ、我々としては、引き続き存続に向けて理解が得られるよう、最大限努力していきたいと考えています。
 今後ともご支援、ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申しあげます。
パブリックコメントは、募集が始まりましたら、大阪府ホームページのhttp://www.pref.osaka.jp/gyokaku/public/index.html
からお入りください。
 なにとぞよろしくお願い申しあげます。
                            大阪府立国際児童文学館 館長
                                       向 川 幹 雄

*案の全容は大阪府のホームページhttp://www.pref.osaka.jp/ でご覧いただけます。