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        残念ながら、知事は児童文学館廃館を選択しました。
 財政破綻の危機を迎えている自治体としては、予算の削減必要なのは当然でしょう。そして、削減しても良いもの、予算を付ける価値のないものと、知事は児童文学館をみなしたわけです。
 これは、一人の政治家の価値観ですから、否定することはできないでしょう。
 案を見ますと、

見直しの理由
・年間入館者数が約65万人の中央図書館の中で事業を実施する方が、多くの府民に提供し得る
・中央図書館へ移転することにより、運営の効率化が図れる
・おはなし会や読書相談などは、中央図書館の子ども資料室等の場所において提供可能

となっており、
必要がないことの裏付けとして、

主な代替・類似
施設
(類似国施設)
 ・国立国際子ども図書館(東京都台東区上野公園、平成12年5月開設、建築延床面積:6,671u、蔵書数約44
万点)
(類似大学施設)
 ・梅花女子大学 児童文学・絵本センター(茨木市宿久庄、平成18年5月開設):一般府民の利用可能
(代替府施設)
 ・大阪府立中央図書館(東大阪市荒本北、平成8年5月開設、建築延床面積:30,770u、児童書蔵書数13万冊)
(代替市町村146施設)
 ・市町村図書館は蔵書全体の概ね1/3〜1/4程度の児童書を所有
 ・大阪市立中央図書館(大阪市西区北堀江、平成8年7月建替開館、建築延床面積:34,532u、児童書蔵書数
24万冊)

と書かれていますから、知事は、資料館である児童文学館を、図書館と同じ機能のものと考えたと推察されます。
 図書館に比べて来館者数が少ないのは、資料を調べる必要のある人しか来ないからですし、貸し出しが極端に少ないのも、資料保存のため、基本的にはそこで閲覧することになっていますから当然です。
 また、「いったん廃止して、必要なら再度行えば良い。」との発言からも、資料館の意味を理解していないのもわかります。資料は持続して集められないと価値がありません(もう少し言えば、持続されればされるほど、その価値は、質的にだけではなく、財産としても、どんどん上がっていきます)。また、長年に渡って資料に精通し、そのスキルを磨いてきた専門員がいないと使えません。いったん廃止すると、同じ機能まで回復することは非常に困難です。
 類似国施設としてあげられている国立国際子ども図書館の蔵書数が約44万点であり、児童文学館が70万点であるのを見ると、その貴重さがわかると思うのですが、このままでは、資料館としての機能は失われることとなります。
 資料の7割は寄贈によって揃えられていたのですが、こうした寄贈も今後なくなってしまいます。出版社が図書館に寄贈することなどあり得ません。出版社は、そこに自社の書物が他社の書物と共に、整理保存されるということだから寄贈していたのです。
 児童文学館に費やされてきた費用は、実は府の年間二億円だけではなく、年間9千万円近くに上るこうした寄贈や寄付も含まれるのです。従って、官民合同の優良見本のような施設なのですが、何故それが必要ではないのか?
 知事は、「本当に府の予算で行うべき研究なのか」との発言をしていますから、直接府民に寄与しないものはいらないということかもしれません。
 しかし、児童文学館は、府のみならず全国、全世界から、ここでしか調べることのできない資料を求めてやってくる施設です。府と府民は、そうした人々のために子ども文化の資料を、整理保存する施設を提供しましょう。それは府と府民が外に対して誇ることの出来る文化遺産資料館だからということで、児童文学館は開館したのです。
 が、知事は、府民は、自分たちに直接利益がないものはいらないと思っていると言っているわけです。
 私たち府民も、なめられたものです。

 知事が、廃館を選択することは自由です。しかし、府立の資料館であり、整理保存されると信じていたからこそ寄贈した人々や出版社に、そのことを説明する責任があります。このままでは、結果的に府と私たち府民が嘘をついたことになります。
 財政逼迫で致し方なかったのなら、致し方なかったこと、その場合、何故削減のために選択されたのが、児童文学館なのか? の理由を説明しなければなりません。不思議なことに、知事はこれまで、他の施設と違って、児童文学館に関しては、その存廃理由の詳しい説明をしていないのです。
 知事が、子どもの文化資料保存に価値を認めていないとしても、これまで蓄積されてきた資料を死蔵(府立図書館のどこに、あれだけの資料を収容するのでしょう? 新に建物を造る?)してしまうのは、別の話です。
 「いったん廃止して、必要なら再度行えば良い。」といったあてもない理由のために、府に死蔵され、専門員がいなくなり、資料の持続収集が止まっては、せっかくこれまで集積された子ども文化資料が無駄になってしまいます。
 知事が、大阪府には維持することが無理である、大阪府民には必要のないものだと判断されるのなら、どうすればそれを引き続き維持できるかを、府以外からも知恵を集め、それこそプロジェクトチームを立ち上げ、模索していただきたい。

 もちろん、これは「案」ですから、もう一度考え直していただけるのが一番良いのですが。(ひこ・田中)
      

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