2008331

大阪府知事

橋 下 徹 殿

社団法人日本書籍出版協会

理事長 小 峰 紀 雄

 

大阪府立国際児童文学館の存続について(要望書)

 

謹 啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。

さて、去る320日に貴職が大阪府立国際児童文学館(以下、国際児童文学館)を視察され、その後の記者会見で府有施設・出資法人見直しの一環として「同じような機能を営む所に統合したほうがいいのではないか」と述べ、府立中央図書館や中之島図書館への統合を検討していることを明らかにした、と報じられました(321日付毎日新聞ほか)。

 申しあげるまでもなく、国際児童文学館は子どもの本の資料・情報・研究センターとして24年間にわたり子どもと本をつなぐ研究や実践活動を展開してきました。児童文学資料70万点の蔵書をベースにした児童文学研究、読書活動研究、児童書検索システムの開発などの事業や活動はユニークで、資料の整理方法やシステムにおいて図書館とは大きく異なる高度な研究機能をもち、その研究成果は読書推進活動を進めている市民の指針となり、研究資料としても、国内はもとより国際的にも活用されて大きな役割を果たしてきました。

当協会所属の児童書出版会員社はこの趣旨に賛同し、国際児童文学館設立以来、要請に応えて各出版社が発行図書の寄贈などの支援を行い、その発展に尽力してまいりました。このような立場からも、設立趣旨の大きな変更につながる今回の「図書館との統合」は看過できない問題であり、これによって、図書館とは異なる国際児童文学館がもつ独自の機能とこれまでの蓄積が無に帰す、あるいはその機能を十全に発揮しえなくなることを危惧します。

ご高承のとおり、2001年に子どもの読書活動推進法が施行され、続いて2005年には文字・活字文化振興法が制定されました。国、地方公共団体、民間が挙げて子どもたちの読書環境の整備に向けて本格的にスタートしたところです。大阪府におかれましても、2003年に「大阪府子ども読書活動推進計画-大阪府子ども読書ルネッサンス」を策定されていますが、そこでは国際児童文学館が重要な役割・機能を担うことが明記されています。

大阪府の財政が危機的状況にあり、それへの対処が緊急を要することは承知しております。また、貴職がその対策に日夜ご苦労されていることに敬意を表するものであります。しかし、子どもの未来は大人の責任です。子どもの未来は百年の計にあります。子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにしていくために、自主的に読書活動ができるよう環境を整備することは、国、地方公共団体の責務(子どもの読書活動推進法)であります。

わが国の児童文学研究、読書推進活動の中核施設である大阪府立国際児童文学館の施設の存続と財団法人大阪国際児童文学館の運営の継続を切に要望します。

謹 白